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食肉料理人集団「ELEZO」

帯広空港から約1時間、広大な大地十勝のまち、豊頃町。豊頃の海には秋になると鮭が押し寄せ、釣り人達で賑わう。

そんな町にポツンとあるのが食肉料理人集団『ELEZO』だ。食肉の原料生産から加工、販売まで自社で一貫して手掛ける珍しい企業である。代表は佐々木章太氏。この男に僕は惚れ込んでいる。一つの命を血の一滴まで無駄にすることなく使い切り、その生命に感謝するという徹底したこだわりを持つ。初めて彼の話を聞いた時、まるで鉄砲で射抜かれたように心を打たれた。なんていうとすごくかっこいいが、決して色男ではなく、眼光鋭く、髭を生やした一見悪そうな顔をした社長であり、料理人でもある。

初めて彼を知ったのは20年程前のこと。ELEZOの豚肉を仕入れたいと注文すると「顔の見えない料理人には売りたくない」と言う。変わった人間がいるのだなと思ったが、話を聞き、事情を説明して豚肉を入れてもらった。

数年後、東京で会員制の店を開いていることを知り、初めて彼の料理を食べた。料理に対する情熱、考え方、味、センスに、なかなかやるな! と驚いた。黄金色のコンソメのコク、前菜のシャルキュトリーの数々、そしてメインの鹿肉に関しては、2歳の鹿と3歳の鹿をそれぞれに火入れをしており、その絶妙な仕上がりとソースは忘れられないほどの美味しさであった。北海道ならではの壮大な自然の恵みである鹿をこれほど美味く、価値を高めることができるのか! と、ため息が出るほど感動したことを覚えている。

何回か彼の料理を食べ、一緒にイベントをしたこともある。共に酒を飲むたびにその人間性や、ふっとした時に出るお茶目なところが好きになった。そしてみるみるうちに彼は頭角を現し、現在は色々なところで活躍している。

今年10月、「うちの15周年記念パーティがあり、新しいファームを立ち上げたので見に来てくれませんか」と連絡をもらい、遠出は極力控えていたが、おめでたいお誘いなので喜んで十勝へ向かった。新しいファームは素晴らしく、衛生環境がしっかり整っており、鹿だけでなく、熊も、鶏もアヒルも豚も扱えるという施設の充実ぶりに感服した。地元の人達と東京から来た人達が一緒になり、豊頃の風を感じながらスタッフが作る手料理を楽しませてもらう。参加していた某雑誌の名物編集長に「佐々木章太の魅力って何ですかね?」と尋ねると「うーん」と頭をひねり、不器用なところではないか、と。不器用ながら色々なことを考え発信している、彼をはじめとするスタッフによって、これからも北海道の知られざる魅力がもっともっと出てくるような気がする。大自然の中で育つ野菜や魚介、ジビエなどはもちろん、やはり一番大切なのはそれを支えるスタッフである。彼の後ろには必ず良い人材が続いてくる気がしてならない。

寒い夜空にキャンプファイヤー、楽しい人達と杯を重ね、最後に打ち上げられた花火が今も瞼に焼き付いている。佐々木章太、これからも止まらずに走り続けて欲しい男の一人である。僕も負けずに走り続けよう。

「味の手帖」(2020年12月号掲載)
イラスト=藤枝リュウジ

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